時悠帖・五差路

まだ若いつもりでいたがついに老いを隠せなくなった爺の 時悠生活雑記

老いるということ

私は親・兄弟みんなの誕生日を覚えている。だから、父が還暦を迎えたのも知っていた、いや、あとで知った。還暦祝いをした覚えはない。母の還暦も同様だ。だいぶ前のこと。
なんて薄情な息子なんだ、と今になって悔いている。

その父が亡くなって丸9年近くなる。
… 母は台車に乗せられて運ばれていた。知っている顔が見える。周りの声はよく聞こえ、誰かが話している。「よく燃えるように油を用意したか」‥ どこに連れて行くんだろう。
と、そこへ父の顔が。「なんでここへ来たんだ。今すぐ帰れ」と怒鳴り帰された…
父の死後まもなくそんな夢を見たんだ、と母から聞いた。その話が正夢じゃなくて良かったのだ。

母も年を取った。「一緒に逝こうと話してたのになんで置いていったの」「早く迎えに来て」と父に話し掛けているらしい。時々電話すると聞かされる愚痴、もう何回聞いたであろう愚痴、愚痴を言いたくなる理由もわかる。だからといって私がどうにかしてあげられるわけではない。その愚痴はもう何回も聞いたよと言いたいが、言っちゃったらもう母には、少しはストレス解消になってるかもしれない愚痴を聞いてくれる相手がいなくなる。黙って聞いてあげるしかない。
もう家の中でもあまり歩けなくなっているけど、幸いにも耳はまだ遠くなっていない。だから、弟たちも週末には電話している。私が電話するのは、他に誰もいなくてお互い気兼ねなく愚痴を言ってそれを聞いてあげられる限られた平日である。

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購読しているあるブログに読書感想が載っていた。
松浦晋也さん(科学ジャーナリスト)の実体験、介護ノンフィクションの「母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記」

老いを止めることは出来ない。認知症の進行を遅らせることは出来ても完治させる特効薬もない。認知症サポーター養成講座を受けたことはあるが実際に介護したことはない。頭では分かってもいざ介護となったら、やさしく接してあげられる自信は全くない。
誰でもなる可能性のある認知症、お名前だけ知ってる松浦さんの実体験、読んでみよう。
朝早くポチッとして、会員でもないのに翌日お昼過ぎには郵便受けに入っていた。便利になったものである。

読みながら自分なりに感じたキーワードを最初の内は書き留めていた。
認知症介護はストレス、認知症と認めることの怖さ、介護の予想外の敵‥通販(定期購入)、食事、失禁、排泄、家族による介護はいつまで… その他いろいろ。

認知症ではないけれど、連れ合いに対する私の普段の接し方はやはりきついものがある。読み終えてそう感じた。
頭では分かってもなかなかそうできない。私が先に逝くんだ、と楽なことを考え、現実から逃げたい自分自身が情けない。

★★★(3点満点)読書感想は書きませんが、お薦めできます。